マンション管理のプロ「ぱたマン先生」のマンション講座です。
さて今回は、「オール電化の物件はおすすめしないぜ」っていう話をお伝えします。
オール電化とは、通常給湯設備やコンロは「ガス機器」が多いのですが、それを含めた室内全ての機器を「電気」で動かすことです。
代表的なものは以下です。
ガス給湯器 ⇒ 電気温水器(エコキュート)
ガスコンロ ⇒ IHヒーター
上記の場合、お風呂やシャワーは電気温水器(エコキュート)を使い、料理ややかんでお湯を沸かすのはIHで加熱するわけです。
オール電化はおすすめしないと言いましたが、IHヒーターは別にいいんです。IHは掃除や手入れが楽ですし、「どうしても中華料理で強力な強火が欲しい!」ということがなければ、火力も十分です。
【2口タイプのIHヒーター】
気になる光熱費ですが、安い順に並べると、
都市ガス(ガスコンロ) 1.0倍
電気(IH) 1.5倍
プロパンガス(ガスコンロ) 2.0倍~4.0倍
この並び順で、○倍というのは、都市ガスを1.0倍とした時の他の光熱費の価格差です。(あくまで参考値であり、機器や鍋によって熱効率は変わります)
IHヒーターは「温まるのが早い」という人が多く、使用後もぞうきんでサッとひと拭きすればきれいになるので、総合点ならむしろガスコンロを上回るかもしれません。
このあたりは好みやライフスタイルにもよるので、一概に言えませんが、少なくても圧倒的なデメリットはないと思っています。
ちなみにプロパンガスは良心的な会社(地域)はまだマシですが、本当にボッタクリのガス会社も多いんです。上場企業の○○ガスとかも最悪だったな~。田舎の何も知らない高齢者からかっぱいでいました。アパートも一戸建てもそう。
私がオール電化をおすすめしない理由は、電気温水器(エコキュート)が問題だからです。
これが電気温水器。
出典:キッチンワークスサイトより
物件によっては共用廊下のPS(パイプスペース)内に格納されていることもありますが、写真のように室内にある場合もあります。
電気温水器のデメリットは、
このあたりの理由により、温水器=オール電化物件はおすすめできないんです。
ちなみに、電気温水器があるけど、ガスコンロもある、という組み合わせはあり得ません。電気温水器とIHはワンセットです。
ただ、逆はあり得ます。(ガス給湯器とIHの組み合わせはある)
私が感じるオール電化の一番のデメリットは「シャワーの水圧が弱い」こと。
割と強めの部屋に慣れていると、吐水量は4分の1以下に感じる物件も中にはあります。
シャワーが一番体感しやすいですが、浴槽のカランのほうでも、キッチンでも、洗面所でも全部同じです。
髪が長い人、強い水圧でないとシャワーを浴びた気にならない人にとっては大問題です。
最近の温水器は性能が上がっていますが、やはりガス給湯物件の6割程度しか水圧が強くない印象です。これは、水を貯めるでかいタンクが破裂しないように減圧しているせいなので、根本的な仕組みが変わらない限り、水圧がガス給湯器に勝ることはないでしょう。
ただ、シャワーヘッドを節水用の吐水口の穴が小さいタイプに換えると、ほんの少しマシになります。
温水器は電気代(光熱費)が高いです。
電気代が安くなるように、23時以降にタンクの水を沸かす仕組みになっていますが、それでもガス給湯器より高い場合が多いです。
以下、1人暮らしで月の費用の比較です。
都市ガス+電気 | オール電化 | |
電気代 | 7,000円 | 13,000円 |
ガス代 | 3,000円 | |
合計 | 10,000円 | 13,000円 |
このようなイメージです。
オール電化工事のサイトでは「夜間の安い時間帯でお湯を沸かすから、温水器のほうが電気代が安い」と謳っているサイトが多いです。
私自身は温水器物件に住んだことがないので、確固たるデータがあるわけではありませんが、多くの入居者から聞き取りした結果、とてもそうは思えません。機種にもよるでしょうが、同じか高いくらいで、少なくても安くなったという話は聞きません。
それに、1Kや2Kマンションの場合、タンクは200リットルほど貯められますが、最悪なのは数人で風呂やら料理やらで大量に使った場合です。昼間にお湯がなくなってしまうと、電気代が高い時間帯なのに沸かさざる得ません。そうなると、電気代=トータル光熱費はさらに高くなります。
ただ、エコキュートを使った温水器は別です。エコキュートとは、空気中に含まれている熱を吸収し、圧縮することで熱を効率的に高める技術を使うことにより、普通の電気温水器の3倍くらい熱効率が良いと言われています。
電気代もかなり安くなりますが、マンション・アパートには不向きです。というか設置されている物件を聞いたことがありません。
エコキュートの場合、温水器+室外機が必要で、音がうるさい(他の入居者からクレームになる)、場所も取る、初期費用も高い、マンションの設計段階からかなり計画的に進めない限り、設置が困難など、かなり制約される設備です。
あくまで、「給湯器と比べれば」ですが、温水器は壊れやすいです。
オール電化の工事のサイトには、耐用年数は、
ガス給湯器 10年
電気温水器 15年
などと書いている場合がありますが、むしろ逆です。ガス給湯器は30年くらい動くものもありますが、温水器は25年くらいもった機種はあまり見たことがないです。
以下は、修理の頻度と費用の目安(費用はオーナー負担)
ガス給湯器 | 温水器 | |
初期費用 | 20~30万円 | 70万円~100万円 |
修理の頻度 | 10~15年に1回 | 7、8年に1回 |
1回の修理費用 | 4万円 | 8万円 |
温水器で多いのが減圧弁、逃がし弁の故障。これは修理で直ることもあれば本体交換が必要な場合もあります。交換の場合はかなり日数がかかります。その間はお湯は使えません。
ただ、これらはマシなケースです。
ひどいのは、
特に水も出ないときで、本体の部品供給が終了している場合、管理会社は仮のホテル住まいを提案しますが、宿泊費は自分の立替のケースが多いです。
人によっては、
『金がない!』
『家のデスクトップパソコン、その他一式がないと仕事にならん!』
『猫ちゃんどうしよう!』
などの問題により揉めるケースも多いです。
温水器は、交換が必要でもすぐに工事できないことがあります。
理由は、温水器は流通量が圧倒的に少ないので、本体は基本的に在庫が手元にない(土日は動けない)、修理の部品もすぐ手に入らないことがありますが、給湯器はその逆だからです。
給湯器も壊れることがありますが、比較的頻度が少なく、工事業者の対応ですぐ直る(または本体交換がすぐできる)ことが多いんです。
玄関外のPS(パイプスペース)に入っていればまだいいですが、室内に温水器が設置されていることがあります。
畳半畳くらいですが、完全なデッドスペースなので、その分の家賃を払っていますが使えないわけです。
【室内の温水器】
このように、玄関近くや廊下、キッチン付近の扉内に格納されていることが多い。
電気温水器のメリットもあります。
このあたりです。
ガスコンロを使うときは必ず換気扇を回す必要があります。臭いもあるし、一酸化炭素中毒の防止のため。
音に関しては、仮に室内に給湯器があってもそれほどうるさくはないですね。比べたら電気温水器のほうが静かです。
「地震等の停電時に復旧が早いのは電気」と、聞いたことがありますが、絶対そうかどうかは不明です。
以上、オール電化(温水器)物件のメリット・デメリットをお伝えしました。
賃貸で暮らす場合もそうですが、投資用マンションや一戸建てを買う場合でも、オール電化は慎重になる必要があります。
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