VTで世界に投資するのはちょっと待て!後出しジャンケンで間に合う
ー 株式投資は分散投資 -
よく言われる言葉で、間違ってないでしょう。
しかし「どのくらい分散したらいいか?」は人それぞれの解釈で大きく違ってきます。
私の過去記事では分散投資は「6銘柄」からと定義しています。
5銘柄は集中投資になるわけですね。
ただ、私は実際6銘柄どころか、メインのHDVで75銘柄、その他のETFでは数千銘柄に分散投資をしています。
だって、やっぱり6銘柄ぽっちじゃ不安だ!(笑)
・・・
さて、では世界分散で有名な「VT=バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」はどうでしょう?
世界各国の約8,000銘柄に分散できる、バンガード社のETFですが、分散数が多いから単純に良い商品なんでしょうか?
他には、
世界はこれからも成長するのか?
好景気の時は?
不況の時は?
ボラティリティ(値動きの幅)は?
結局トータルリターンはいいのか?
このあたりを考えていきます。
VTの基本情報
まずVTの基本情報から。
名称 : バンガード・トータル・ワールド・ストックETF
ティッカー : VT
運用会社 : バンガード社
概要:米国、欧州、日本などの先進国株式と、中国やインドなどの新興国株式含め、全世界の株式市場への連動を目指す。
指数 : FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス
設定日 : 2008年6月24日
純資産 : 169億ドル
経費率 : 0.10%(年間手数料)
組入銘柄数:約8000銘柄
国別割合グラフ(2018年6月現在)
国別の組入比率はアメリカが53.4%と1位。
2位は日本の8.2%
中国が3.3%と低い比率になっています。
初めてVTの国別比率を見たときは怪訝に思ったものです。
「ほとんどアメリカじゃんか。もっと均等に近いほうがいいのでは?」と。
ただ、全世界の株式の「時価総額」で見ると圧倒的にアメリカが多いんです。
なので、組入比率が高いのは妥当なんですね。
それは次のIMFのGDP表でも分かると思います。
今後の世界成長は?
以下の表はIMF(国際通貨基金)が2018年10月にまとめた「世界の成長予想」です。
それぞれ、2017年・2020年・2023年の3つの年の国別GDPと、その6年間の成長率。
2023年度のGDP(国内総生産)順にトップ10カ国を表にしました。(米ドルベースで単位は10億ドル)
スマホは横向きにすると右側も見られます。
国別 | 2017年 | 2020年 | 2023年 | 6年間の成長率 | |
1 | アメリカ | 19,485.40 | 22,289.31 | 24,670.54 | 126.6% |
2 | 中国 | 12,014.61 | 15,461.96 | 19,580.60 | 163.0% |
3 | 日本 | 4,873.20 | 5,371.69 | 5,907.64 | 121.2% |
4 | ドイツ | 3,700.61 | 4,331.70 | 4,937.23 | 133.4% |
5 | インド | 2,602.31 | 3,258.88 | 4,329.94 | 166.4% |
6 | フランス | 2,587.68 | 2,979.44 | 3,363.51 | 130.0% |
7 | イギリス | 2,628.41 | 2,912.89 | 3,257.15 | 123.9% |
8 | イタリア | 1,938.68 | 2,191.67 | 2,395.57 | 123.6% |
9 | ブラジル | 2,055.14 | 2,027.56 | 2,351.29 | 114.4% |
10 | カナダ | 1,653.04 | 1,937.05 | 2,321.85 | 140.5% |
この表はドルベースですが、1ドル100円計算で円換算すると、2023年上位3位予想は、
アメリカ : 2467兆円
中国 : 1958兆円
日本 : 590兆円
となります。
アメリカと中国の「2強」がはっきりしていますね。
6年間の成長率が150%を超えている、中国とインドは太字になっています。
ブラジルは伸び率がイマイチ。BRICs(ブリックス)という言葉は死語かな。
10位のカナダは1位アメリカの10分の1以下の数字です。
表をグラフにしたものはこちら。
ついでに11位から30位も見てみましょう。
国別 | 2017年 | 2020年 | 2023年 | 6年間の成長率 | |
11 | 韓国 | 1,540.46 | 1,781.77 | 2,054.56 | 133.4% |
12 | ロシア | 1,577.53 | 1,683.82 | 1,818.40 | 115.3% |
13 | オーストラリア | 1,379.55 | 1,541.44 | 1,794.43 | 130.1% |
14 | スペイン | 1,313.95 | 1,550.65 | 1,758.38 | 133.8% |
15 | メキシコ | 1,151.05 | 1,306.77 | 1,526.99 | 132.7% |
16 | インドネシア | 1,015.41 | 1,175.08 | 1,446.43 | 142.4% |
17 | オランダ | 832.239 | 980.561 | 1,106.78 | 133.0% |
18 | トルコ | 851.521 | 744.055 | 958.259 | 112.5% |
19 | サウジアラビア | 686.738 | 815.316 | 889.504 | 129.5% |
20 | スイス | 678.967 | 766.559 | 873.604 | 128.7% |
21 | ポーランド | 524.833 | 628.125 | 787.726 | 150.1% |
22 | 台湾 | 572.594 | 661.275 | 774.022 | 135.2% |
23 | ナイジェリア | 376.361 | 504.573 | 736.518 | 195.7% |
24 | スウェーデン | 535.615 | 586.651 | 669.14 | 124.9% |
25 | タイ | 455.378 | 555.232 | 652.18 | 143.2% |
26 | ベルギー | 493.669 | 569.851 | 637.868 | 129.2% |
27 | オーストリア | 417.351 | 494.455 | 559.345 | 134.0% |
28 | アルゼンチン | 637.557 | 444.98 | 540.659 | 84.8% |
29 | アラブ首長国連邦 | 382.575 | 475.096 | 533.641 | 139.5% |
30 | フィリピン | 313.595 | 385.44 | 510.937 | 162.9% |
あれ?インドネシアは150%超えないんだ。そっかー、残念。
他に気になるのは23位のナイジェリアか。195.7%の伸びは凄いです。予想が当たればですが。
・・・
1位から表を眺めると、新興国はまずまずとしても、意外に先進国も死んでないのが分かりました。
ただ、私はIMFをあまり信用してないので、話半分で考えています。
まあ、真逆になったりするほど精度が低いこともないでしょう。
ざっくりと見るには参考になると思います。
長期・中期・短期のチャートで比較
世界の「見通しが暗くない」ことは分かった。
じゃあ、「過去の実績」はどうか?
今度は過去のチャートを見ていきましょう。
まずは、VT設定日の2008年6月24日から、現在の約10年のチャートです。
比較するのは「VTI=バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」
「絶対王者のアメリカ」
そのアメリカの99%の株式、約3000銘柄を網羅しているのがVTIです。
キング対ワールドの対決はいかに?
こちらは10年チャート。
青がVT
赤がVTI
緑の枠が、2008年VTが設定された年からのチャートです。
単純にキングの圧勝。
ボラティリティ差もないかな。
次は5年チャート。
またキングの圧勝。
ボラティリティも似ているけど、2018年9月ごろにVTIは良く伸びています。
その分も差になっていますね。
次は1年チャート。
6月ごろまでは仲良くくっ付いていますが、8~9月ごろに引き離しています。
その後、秋冬の大型下落で仲良く落ちていますが、その前の貯金分があるのでアメリカの勝ちです。
次は3ヶ月チャート。
短期チャートはあまり参考になりませんが、お互い似たようなラインを描いています。
・・・
さて、1つの結論が出ましたね。それは、
相場が堅調の時はアメリカは大きく上げ、逆に軟調の時は、アメリカも世界も同時に落っこちる。
アメリカは落ちた時の戻りが早いとも言えます。
つまり、
攻めに強く、守りが普通なアメリカ
攻めが普通、守りも普通な世界
という図式になるわけです。
ちなみに、新興国だけだと守りはスカスカ(激下がり)です。攻めは時期によりますね。
VT 対 VTIトータルリターンは?
最後にVTとVTIのトータルリターンを比較してみましょう。
リーマンショックで大きく下げた2009年1月から、2018年12月現在の騰落率です。
2009年1月の価格 | 2018年12月の価格 | 騰落率 | |
VT | 31.46ドル | 71.11ドル | 126% |
VTI | 43.45ドル | 126.17ドル | 190% |
VTIのほうが、VTより「1.5倍」リターンが多いことが分かりました。
チャート比較である程度は分かっていたので、想像通りですね。
VTを買う意味はあるのか?
では、結論に入りましょう。
「VTは必要か?」
ズバリ答えます。
【結論】ぱたるは買うけど少額で。
となります。
単純に投資対象として考えると、現在のところは「不要」です。
買う目的は、あくまで世界市況を肌感覚で知るためのツールとして使います。
人によっては『そんなもの無料チャートで見ればいいじゃん』という考えもあると思いますが、私は少額でも身銭を切ったほうが日々の変化も感じ取れると思うので購入します。
現在は、ETFのVTではなく、投資信託の通称「楽天VT」で毎月シコシコ積み立てていますので、今後も継続していきます。
あ、ツールだったら最低額の100円積立でもいいか。さすがに少なすぎか。まあ、後で考えよう。
過去記事でVTを押していたが・・・
私の過去記事(投資信託のカテゴリ)では、楽天VTを一番でなくても4番目(笑)くらいにおすすめしています。
それは間違いかと言うと、決して間違いではないです。
投資という一般的に「ワケが分からないもの」と向き合うには「分かりやすい商品」がいいと思ったからです。
VTや楽天VTは
世界に分散投資!
日本株は組入2位!
という、これ以上ないくらい、分かりやすいコンセプトなのでおすすめしているんです。
アメリカはいつまでも王者とは限らない
一方こういう考え方もあるでしょう。
『アメリカはいつまでも王者とは限らない』
『世界がどう転んでもいいように対応するには、始めから全世界に投資すればいい』
だから「VTは良い」
という理屈です。
こういった考えは間違っているとは思いませんが、私はいつでも「後出しジャンケン」で間に合うと考えています。
なぜなら、王者アメリカの権威なり、経済力なり、様々な影響力が薄くなるのは一瞬では起こりません。
「徐々に」何かしらの兆候があるはずです。
私は学者ではないので詳しくは分かりませんが、要素は、
【アメリカ側】
- GDPが減る
- 人口が減る
- ハイテクを中心とした世界規模の企業が弱くなる
- 軍事的な影響力が落ちる
- イノベーションが生まれにくい社会になる
- VTのアメリカ比率が減り、他国の比率が高まる
次に、
【中国側】
- 企業の会計基準や透明性がアメリカに近づく
- 政治体制に一定の透明性が生まれる
- 上記以外にも外国人投資家が投資しやすい環境に変わる
こういった要素が1つでも「なんか最近変わってきたよな~」と思い始めてからでも、VTを投資対象として買い始めるのは遅くないと思っています。
今回は、次世代王者の可能性がある中国を上げましたが、インドなど他の国でも考え方は同じです。
まとめ
VTは人によって賛否が分かれるETFです。
私は決して悪い商品だとは思いませんが、VTに大金を投入するならVTIなり、S&P500なり、高配当ETFなり、もっと良い商品があると思うのでそちらに資金を回したいですね。
今もVT(楽天VT)を買い増ししている人で、私と同じように「後出しジャンケン」でいけるかな?と思った人は購入額を減らしてみるのもありだと思うな。