下表はSBI証券の米国ETF週間ランキングです。(2019年5月現在)
順位 | ティッカー | 銘柄名 | 特徴 |
1 | SPXL | DirexionデイリーS&P500ブル3倍ETF | S&P500のブル3倍 |
2 | VOO | バンガードS&P500ETF | S&P500 |
3 | VTI | バンガードトータルストックマーケットETF | 米国株全体 |
4 | SPXS | DirexionデイリーS&P500ベア3倍ETF | S&P500のベア3倍 |
5 | QQQ | インベスコQQQトラストシリーズ1ETF | NASDAQ100 |
6 | SPYD | SPDRポートフォリオS&P500高配当株式ETF | 高配当 |
7 | VYM | バンガード米国高配当株式ETF | 高配当 |
8 | IVV | iシェアーズS&P500ETF | S&P500 |
9 | HDV | iシェアーズコア米国高配当株ETF | 高配当 |
10 | BND | バンガード米国トータル債券市場ETF | 米国トータル債券 |
おなじみの銘柄たちが揃ってますね。
SPXLが1位とは意外でしたが、今回は7位にランクインしている「VYM」と、S&P500を代表する2位の「VOO」を比較してみたいと思います。
VYMは上昇率でS&P500に負け、配当率ではSPYDやHDVに負ける「中途半端なETF」と言えます。
私がETFを買い始めた頃は、「VYMは成長と配当の両方を兼ね備えたエリートETFだ!」と、メインで買おうかと思っていたこともありました。
しかし、配当率は3%を切ることもあり、2%弱のVOOと大きく差がない割りに、上昇率ではいつもVOOやVTIに負けている。
「あれ? これエリートどころか、中途半端なETFじゃね?」
と思い直し、HDVやPFF、SPYDの保有比率を高めていました。
・・・
しかし、今改めてVYMを再評価するに至りました。
つまり、
初期の頃は「VYMは二刀流のエリートだ!買いだ!」
↓
「VYMは中途半端。他の高配当ETFのほうがいいや」
↓
「あれ? よく考えてみたらVYMありだな」←今ここ。
順を追って説明しましょう。
ではVYMとVOOの比較をしてみましょう。
下はVOOが設定された2010年から現在のチャートです。(VYMは2006年に設定)
赤がVYM
青がVOO
下図は2010年、2018年の価格とその期間の騰落率です。
2010年8月 | 2019年5月 | 騰落率 | |
VYM | 40.66 | 86.89 | 113.7% |
VOO | 109.9 | 256.25 | 133.1% |
VOOは133.1%と、VYMより約19%もリターンがいいことが分かります。数%ならまだしも、19%となるとかなりの違いですね。
19%もリターンが違うならVOOの一択と思いますよね?
しかし、「配当金込み」ならどうでしょう?
巷で流れている、『配当込みなら高配当株(ETF)もS&P500に勝てる』という噂。
それは本当なのか?
VYMはそれを体現するエリートETFなのか?
調べてみましょう。
実際に、私は2010年からいずれも保有してないので、今回は仮の条件として以下に設定します。
それでは、上記の条件に従って、
10年間の配当金の合計金額(インカムゲイン)
2019年に売った場合の売却益(キャピタルゲイン)
を計算してみます。
下表はVYMの配当金合計。
1万ドル分なので245口。配当率は3.05%に一律固定。
年度 | 2010 | 2011 | 2012~2017年は省略 | 2018 | 2019 | 合計 |
基準価額 | 40.66 | 44.12 | 78.09 | 86.89 | – | |
配当金 | 303.8 | 329.7 | 583.5 | 649.3 | 4523 |
10年間で配当金(税引き前)の合計は4,523ドルで、信託報酬の0.06%を引いて「4,520ドル」
次に売却益です。
(86.89ドル×245口) – (40.66ドル×245口) = 「11,327ドル」
VYMのトータルリターンは、4,520 + 11,327 = 「15,847ドル」になりました。
下表はVOOの配当金合計。
1万ドル分なので90口。配当率は1.89%に一律固定。
年度 | 2010 | 2011 | 2012~2017年は省略 | 2018 | 2019 | 合計 |
基準価額 | 109.90 | 120.34 | 227.15 | 256.25 | ||
配当金 | 186.9 | 204.7 | 386.4 | 435.9 | 2922 |
10年間で配当金(税引き前)の合計は2,922ドルで、信託報酬の0.03%を引いて「2,921ドル」
次に売却益です。
(109.90ドル×90口) – (256.25ドル×90口) = 「13,171ドル」
VOOのトータルリターンは、2,921 + 13,171 = 「16,092ドル」になりました。
VYM「15,847ドル」
VOO「16,092ドル」
で、
245ドル差でVOOのトータルリターンが勝りました。
『なんだ、10年で25,000円くらいの差か、気にする必要ないね』
と思ったあなた、正しいとも言えるし、間違っているとも言えます。
今計算したのは税引き前です。
配当金は、日本国内税は20%とし、米国現地税の10%は確定申告で半分取り返せるとして5%。合計25%の税金がかかるとしたらどうなるか、計算してみます。
細かな計算は省略しますが、配当金の合計は、
VYM「3,394ドル」
VOO「2,194ドル」
次は売却益です。こちらは20%の国内税を引きます。
VYM「9,061ドル」
VOO「10,536ドル」
VYMのトータルリターンは、「3,394ドル」+「9,061ドル」=「12,455ドル」
VOOのトータルリターンは、「2,194ドル」+「10,536ドル」=「12,730ドル」
その差は、「275ドル差」でVOOのトータルリターンが勝りました。
さっきの税引き前は「245ドル差」でしたね。30ドル増えました。
『ほ~ら、やっぱり微差じゃん、気にする必要ないね』
というあなた、これが1万ドル保有じゃなくて「50万ドル保有」でもそう言えますか?
欧米で流行りつつある「FIRE(ファイア)ムーブメント」。
つまり、節制して投資して、アーリーリタイアを目指す動きのことです。
VYMやVOOを買うような人の内、何%かはアーリーリタイアを目指す人がいそうな気がします。私も近々のリタイアは無理ですが、その選択肢を得たいと思っています。
そういう人ならVYMやVOOを、50万ドル分(約5000万円分)くらい買うんじゃないのかな?(またはその予定)
仮に50万ドルなら、275ドル(1万ドル買って10年) × 50 = 13,750ドル。
VOOを買ったほうが13,750ドルリターンが多いんです!
20年なら、27,500ドル差!
30年なら、41,250ドル差!
ま、そう単純でもないけどね。
ただ、参考になるのではないでしょうか。
『おい、ぱたるよ、冒頭で「VYMを再評価した」とか、「VYMはありだ」とか言ってたけど、VOOのほうが圧倒的にいいじゃんか』
と思いますよね。
これの答えはズバリ、
「配当金が好きだから」
「アラフィフだから向こう50年も成長株をやれないな」
とか、
「そこまで大金を突っ込まないつもりのVYMが、意外にトータルリターンが高かったから」
とか、
「配当率が下がったHDVと比べて、相対的に魅力が増した」
などの、もっともらしい理由もあることはあります。
特にHDVの例があるので、1つのETFの保有率を高めすぎない狙いもあります。
でも、突き詰めていくと「配当金が好きだから」になるかな。
以前もブログに書きましたが、私は売却していないアセットの含み益は、管理画面に映っている幻だと思っています。
もちろん100%信じてないわけじゃありませんが、そこまで信用もしない。
けど現ナマ、キャッシュは違います。100%信用できます。(為替とインフレの話はおいといて。それは別の機会に)
私のメイン銘柄は保有率が高い順に、
PFF
HDV
VYM
SPYD
になっています。
すべて高配当ETFですが、これだけで全投資アセットの8割を占めます。
VOOや投資信託に資金をあまり振り分けないのは、良くない投資先と思っているからではなく、「他の高配当ETFがそれ以上に好きだから」です。
『税金が出て行く高配当株より、VOOや、なんならQQQみたいなグロース株のほうが効率がいいよ』
という人もいますよね。それは全然間違っていません。
ただ私は、SBI証券でDRIP(配当金の自動再投資)が開始されてもおそらくやらないでしょう。それは上記に挙げた理由からです。
私の考え方はマイノリティかもしれませんね。
ただ、何かしら皆さんの参考になれば嬉しいです。
これの応用企画で、
「VOO 対 HDV 編」
「VOO 対 SPYD 編」
なんかは興味あるかな?
ニーズがありそうならそのうちやりましょう。
というか、
「VOO 対 HDV」やったら自分自身に冷水をぶっかけることになるな(笑)
きっとHDVのトータルリターンがひどすぎて。
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