「良い株は、そう思ったときが買い時」という考え方があります。
良い株=将来に渡って利益をもたらしてくれる。だったら今高く見えても買えばいい、という理論です。
反面、「下がったところで押し目買いがいい」という考えもあり、いずれも間違っていません。
さて、今回は「エイリス・キャピタル(ティッカー=ARCC)」にフォーカスします。
ARCCはいつ買えばいいか?
値動きが似ていて、配当金生活向きのPFFと比べてどうなのか?
そもそも買うに値する株なのか?
そのあたりを探っていきます。
私はETFがメインで個別株はやりません。(2009年ごろに日本株を買いましたが全て売却済み)
理由は、ETFのメリットと個別株のデメリットの差が非常に大きいと考えているためです。
詳しくは個別株でなくETFを買う理由
投資と言えば個別株世間一般のイメージはそうでしょう。他にも投資信託や不動産投資などもありますが、やっぱり投資と言ったら株、株と言ったら個別株。それは「ETF」が知られてないから、株=個別株になっているのかもしれません。 個別株 VS ETF「個別株とETFはどっちがいいか?」の主張は、本やネット記事でよく見ます。 大きく派閥を分けると、 個別株派 ETF派 使い分け派の3タイプに分けられるでしょう。 結論からいうと、私はETF派です。現在、個別株は持っておらず、ポートフォリオに占めるETFの割合は約9割... 私が個別株でなくETFを買う5つの理由 - 2024年にFIREするぱたるの米国株ブログ |
ARCCは個別株なので、本来は買う対象にはなりません。
しかし、ARCCはBDC(ビジネス・ディベロップメント・カンパニー)と呼ばれる、銀行の代わりに中小企業に融資を行う投資会社で、利益の90%以上を投資家に配当として分配することで、法人税がかからないという特殊な法人形態なんです。
そのため、ARCCの事業はREITのようなファンドに似ている性質を持っています。
そのような性質もあり、ARCCの値動きは通常の個別株のように大きく上下することが少なく、PFFなどに似て安定しています。
そして、安定している割に、配当率は9.11%と非常に高めなのが魅力なんです。(配当率は2019年6月5日 YAHOO! FINANCEより)
ARCCの配当率が高いと言っても、高配当のオンボロ株は世の中にゴマンとあります。
当然気になるのは安全性。
『銀行の代わりに中小企業に融資って、銀行も貸さないような企業に貸すような会社って大丈夫? 飛ばれたら焦げ付いて終わりじゃないの?』
という不安もあります。実際そういうこともあるでしょう。
ただ、
など、一定の安全策は取られています。
ARCCのようなBDC(ビジネス・ディベロップメント・カンパニー)の銘柄は他にも、
などもありますが、その中でもARCCは最も時価総額が高く、設立の1997年から安定した実績を上げています。(One Tap BUYでも採用)
「ARCCの値動きは通常の個別株のように大きく上下することが少なく、PFFなどに似て安定してる」と言いましたが、実際のチャートで見てみましょう。
こちらは2006年から2019年現在までの、ARCCとPFFの比較チャート。
赤がARCC
青がPFF
ガツンとV字型に下がっているのは2008年のリーマンショック。その後はARCCもPFFも安定しています。ただ、よりボラティリティが小さいのはPFFのほう。
次は2014年から2019年現在までの5年チャート。
やはり赤のARCCのほうが波が大きいですね。
精神の安定には、ボラティリティは小さいほうがいいに決まってる。
ボラティリティが多少大きくても、それを上回るメリット=配当率が高ければ検討の価値はありそうです。
配当率は、
ARCC 9.11%
PFF 5.91%
その差は、3.2%
う~ん、3.2%は相当デカイぞ。(配当率は2019年6月5日 YAHOO! FINANCEより)
今、VYMの配当率は3.05%です。
ってことはARCC1つで、PFFとVYMの2つ分の稼ぎ以上!?
まあ、VYMは20年後に何倍かになっているでしょうし、ARCCの平均株価は16ドルくらいで、良くても19ドルくらいまでしか上がらないでしょうから一概に比較できませんが、それでもスゴイぞ、ARCCの配当率は。
PFFの経費率は0.46%と、割と高めのコストがかかります。10,000ドル保有で46ドルのコスト。
ARCCは個別株なので、信託報酬のコストがかからないのもメリットです。
ARCCの配当月は3ヶ月ごとに、3・6・9・12月の年4回。
PFFは毎月配当なので、気分的には毎月のPFFがいい感じ。
特に下落が続いているときは配当が心の安定剤になります。
さて、ここまで見てみると、ARCCもなかなか悪くない。
ただ、PFFも同じですがARCCも金融危機に弱いと言われているので、ポートフォリオのメインに据える銘柄ではないと思います。
それにキャピタルゲインが期待できないどころか、何十年持ってもマイナスになる可能性もあります。
あくまで基本はVOOなどの王道型や、SPYDなどの高配当でキャピタルゲインも狙えるETFをコアにするのがおすすめです。
やはりメイン銘柄の株価が、買った時に17ドル、売った時に16ドルじゃ悲しいですから。
ポートフォリオの割合は人それぞれですが、せいぜい5~20%くらいまでが適切ではないでしょうか。例えば、30万ドルの20%なら6万ドル(650万円くらい)、5%なら1.5万ドル(160万円くらい)。
6万ドルなら税引き後(25%計算)で、年間4,098ドルの配当金をゲットできます。
1.5万ドルでも税引き後(25%計算)で、年間1,024ドルの配当金をゲットできます。
保有量によっては、ARCCは夢の配当金生活を強力にアシストしてくれるかもしれません。
先ほど、「買った時に17ドル、売った時に16ドルじゃ悲しい」と言いました。
これも確かに悲しいんですけど、それプラス、「管理画面を見たときに、いつもマイナスになっているのを見るのも嫌なものなんです」
VOOやSPYDならそういうことは少ないです。(いずれ上昇するから)
しかし、PFFやARCCはありえる。
下がった後の押し目買いで買えばいいんですが、ARCCは通常ちょくちょくあるような「○○プチショック」ではあまり下がりません。大きな金融不安がある時、下がると言われています。
ならば、それなりのデカイ金融危機が来るまで待つか?
それも何だかな・・・。
ARCCが買える楽天証券とマネックス証券の指値有効期間は90日なので、無期限指値を入れっぱなしにできない。(SBI証券ではまだ買えない)
あ、証券口座にドルをずーと入れっぱなしにしないか。(ドル決済の場合)
・・・
そもそも、本当に金融危機のとき限定で下げているのか・・・?
金融不安以外でも、実は過去に下げているのか?
・・・
特徴や買うタイミングが何か分かるかもしれない。調べてみましょう。
下は、2006年から2019年現在のARCCのチャートです。ARCCの株価は、通常15~19ドルあたりを推移しています。
横の青い線は15ドルのラインですが、そこに触れたり、突き抜けて下がったりした場合を大幅下落と捉えてみましょう。
青丸①の2008年リーマンショックから、合計過去7回の大幅下落があったようです。
②と⑥もなかなかの下げっぷりだな。12ドル近くまで下落している。②はリーマンの余波だろうか?
では一つひとつ見ていきましょう。
①は説明不要ですね。2008年の金融・経済危機を引き起こした要因が米大手銀行の放漫経営にあったと言われています。
この時ARCCの株価は3.60ドルまで暴落しました。
平時の平均株価を16ドルとすると、騰落率は-77.5%です。悪夢です。
このラインが1つの基準になりますね。最悪の値として。
②は2010年欧州ソブリン危機です。以下wikiより
2010年欧州ソブリン危機(2010ねんおうしゅうソブリンきき)または、欧州債務危機(おうしゅうさいむきき)、欧州経済危機(おうしゅうけいざいきき)、欧州危機(おうしゅうきき)、通称ユーロ危機(ユーロきき)は、2009年10月のギリシャ政権交代による国家財政の粉飾決算の暴露から始まる、経済危機の連鎖である。スペイン、ポルトガルなどユーロ加盟諸国(PIIGS)、あるいはハンガリーやラトビアなど中東欧諸国へ波及した場合、世界的な金融危機に発展するかもしれないと懸念されている。2011年以降にもユーロ圏第三位のイタリア情勢が深刻化するなど、欧州不安は広範囲に拡大した。
ベルリンの壁崩壊から、EU、ユーロ経済圏誕生という流れは、当時は日本人の私でも、とてもエキサイティングなことでした。欧州人に生まれていたら興奮しただろうな。
ただ、ギリシャは実際の財政赤字を偽ってユーロに加盟した経緯があり、この案件後も欧州の「兄弟たち」を悩ませ続ける存在になっていきます。
イタリアもダメ兄弟ですが、特にギリシャは欧州のジャギ(※)と私は呼んでおり、ギリシャには嫌な思い出しかありません。(※北斗の拳のケンシロウのダメ兄)
とりあえず、ARCCは欧州債務危機に弱い模様。
③は2011年9月頃ですが、特に「これ」といったものはなく、「欧州不安や世界景気減速懸念」による下げでした。
以下は経産省のサイトより
2011年6月以降、ユーロ圏では、当事国の意見対立によりギリシャのデフォルト懸念が収束せず、市場の懸念はイタリアやスペインにまで拡大した。また、米国では、連邦政府の債務上限引上げを巡る政治的対立により、一時的なデフォルトの可能性が生じた。実際には妥協の成立により回避したものの、8月5日には、大手格付会社の1つが米国債の格付を史上初めてトリプルAからダブルA+へと引き下げた。このような米国の財政懸念とユーロ圏債務危機の深刻化を反映し、2011年夏から秋には世界同時株安、国債価格の下落、為替市場の変動など、世界的な金融市場の混乱が生じた。
出典:経済産業省
③はジャギ(ギリシャ)もダメなら、アミバ(北斗の拳キャラ=イタリアなど)もダメだろうという不安と、米国債の格下げによる不安か。
このあたりは記憶が曖昧でよく覚えていません。
またもや欧州債務危機と、米国債格下げでARCCは下落。
④は2012年5月に下げましたが、またもやギリシャ絡み。何度現れるんだ、お前は大どろぼうホッツェンプロッツか。
ギリシャでは財政緊縮の受け入れか否かで国民の意見が二分。デフォルトの危険性がありました。ギリシャの再選挙決定が嫌気され、世界株安になりました。
ニュースでギリシャ(あとイタリアあたりも)の名前がよく出るようになったら、ARCC売るのもアリか(笑)
ただ、④の下げはそこまで大きくはありませんでした。
⑤は2015年8月下旬に起きたチャイナ・ショックです。
以下wikiより
中国株の大暴落は、株バブルが引き金となり2015年6月12日に始まった株価の大暴落。ひと月の間に上海証券取引所のA株は株式時価総額の3分の1を失った。
この年、暴落に至るまでに個人投資家たちは巨額の株式投資を行い、株バブルを膨らませ続けた。背景としては国営メディアが一般の投資家たちを煽り立ててハイリスクな信用買いに向かわせていたと指摘されている。加熱した投資により株価上昇率は経済成長率をしのぎ、彼らの投資する企業の利益を上回っていた。ひとたび株価が下落すると投資家たちは追加保証金の請求に直面、彼らの多くが強制的に保有株式の売却を迫られる事態となり株価の急落を招いた。
政府は下落を食い止めるために様々な手段を講じるが、株価は下がり続けた。上場銘柄の半数以上にあたる1400社に及ぶ企業が取引停止を申請する中、2015年7月8-9日までに上海証券取引所は株価の30パーセントを下げた。
これも金融危機の1つと言っていいでしょう。
ただ、ARCCが投資している企業への負の連鎖という意味で、どのくらい強いショックだったのかはよく分かりません。
①~④に比べて、少し小さいショックのように思えますが間違いだろうか? 株価は15ドルあたりまでしか下がってないので、もしかしたら、ARCCにしてみたら小さいショックだったのかもしれません。
⑥は2016年2月頃に13ドル台まで大きく下げていますが、これ実はあまりよく分からないんです。
大きく下げた順だと、
① 2008年リーマン・ショック
② 2010年欧州ソブリン危機
⑥ 2016年2月頃の大幅下げ
と、3番目に大きく下げています。
⑥ 2016年2月頃の大幅下げは、
などがありましたが、記憶があやふやで、ネットで見てもあまり詳しい情報が載っていない。探せていないだけだろうか?
欧州危機の再来懸念は、2015年8月にEUがギリシャの金融支援を正式決定したことで、債務不履行(デフォルト)とユーロ圏離脱は回避されたものの、先行きが不透明だったことです。さらに、重債務国のアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアに波及して不安が広がりました。
⑤のチャイナ・ショックと共に、ARCCが下げた理由としては少しクエスチョンが付きますね。
今回出てきた、新たなキーワードは「原油安」
これもニュースで頻繁に出た際、ARCCの株価に影響するか今後に注目してみましょう。
最後⑦は2018年12月の米国FF金利の利上げショックです。
これは単純に、エイリス・キャピタルが投資している会社の株価に影響し、エイリス・キャピタル本体に影響すると思われたからじゃないだろうか。
ただ、金利引き上げは金融危機ではありません。
まあ、7回の下落中、2位の小さい下落なのでそれは納得できますね。
では、一番大きく下げた順で、その内容と共に並べ替えしてみます。
① 2008年リーマン・ショック ⇒ ここ10数年で最大の金融危機
② 2010年欧州ソブリン危機(欧州債務危機) ⇒ 欧州債務
⑥ 2016年多面的金融危機 ⇒ 原油安と欧州債務
③ 2011年欧州不安や世界景気減速懸念 ⇒ 欧州債務
④ 2012年ギリシャ、デフォルトの危機 ⇒ 欧州債務
⑦ 2018年米国利上げショック ⇒ 金融危機じゃない
⑤ 2015年チャイナ・ショック ⇒ ARCCに大きく影響するかは疑問?
こうなりました。
なんとなく見えてきたぞ。
やはり予想通り、基本的には世界的な金融危機の大きさで下げ幅は変わりますね。
ただ、⑥の2016年多面的金融危機 ⇒ 原油安と欧州債務はすこしあやふやな感じ。
急落への危険ワードは、
欧州債務
原油安
利上げ
このあたりで大きなショックがあった場合、大幅下落する可能性があると、過去のデータから読み取れました。
上記から外れたものは絶対じゃないとしても、まあまあ安全圏かもしれません。
外れたものと言えば、
このあたりは、普通の景気敏感株なら即反応しても、ARCCはピクリとも動かないなんてこともよくあります。
さて、いろいろ調べた結果、私はARCCを買うのか?
買うならいつ買うのか?
アンサーしましょう。
それは、
・・・
私はARCCを買ってもいい。
あ、ウソ、すかしちゃった。
ホントは、
私はARCCを買いたい!(照)
やはり配当利回りの高さは、デメリットを上回るメリットだと思いました。
それで、「どのタイミングでARCCを買うのか?」ですが、正直考え中です。
今の考えは、「15~16ドル台前半まで下がったら買ってもいいと思う」です。
今回の企画は、15ドルを切った(それに近い)場合を大幅下落と捉え、過去十数年で7回あると説明しました。
逆に言えばたった7回しかないので、また15ドル切るまで待つのは性に合いません。(たまたま訪れたらラッキーだが)
かといって、17ドル台で買った場合、20年持っていても含み損(評価額の)を抱えそうなのは萎えます。
だったら、15.90~16.30ドルあたりで買えたら問題ないかなと。
配当好きなら、保有額に注意して買うのはアリです。
あなたなら平時に即買い?
それとも押し目買い?
いずれにしても、何かの参考になれば嬉しいです。
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